2014年12月30日火曜日

2014 劇場鑑賞作品ベスト5

今年も終わりという事で、総括。

今年はホドロフスキー、アンゲロプロス、トリアーという巨匠達の映画が上映され、それをある程度ちゃんと観に行けた。

残念ながら小林啓一監督の新作は前作を越える事は無かったけど。
「DUNE」を観ていないことだけが唯一の心残り。



1.「メビウス」

台詞無し、劇中に出てくる単語は基本英語という、少しでも映画を純粋に楽しむべく作られた映画。
英語もなかったらもっと良かったかもしれない。
この映画を筆頭に今の韓国映画がATGだとして、十年後に「日常に小さな幸せを見つけよう♪」とか言い出さない事を切に願う。
ストーリーテリングの素晴らしさも然る事ながら、あのお母様の表情が観れただけでおなかいっぱいでございます。

2.「エレニの帰郷」

アンゲロプロスの映画をまさか劇場で観るとは思わなかった。
わたくしの煩悩では到底理解しきれていませんが、それでも1シーン1シーンの美しさはまだ脳裏に焼き付いている。
地下鉄のダンスシーンはまさにイメージとしての”映画”で、まるで「カサブランカ」を観ているようだった!
生き返ってくれ!

3.「ゴジラ」

ゴゼィーラー!
漫画みたいに口をあんぐり開けて鑑賞したのは初めてかもしれない。
敵の首を片手に勝利の雄叫びを上げるゴゼィーラーの姿は最高だった。
2も期待。

4.「ウルフ・オブ・ウォールストリート」

劇場は一回、レンタルは数えきれないくらい今年一番繰り返し見た映画。
70のおじいちゃんが撮ったとは思えないくらいハイテンションで低俗でユーモアに溢れていた。
結局映画界は天才か不良かが生き残るな…。


5.「ニンフォマニアックVo.1 , Vo.2」

トリアーの新作。
どんどんキャッチーになっていくトリアー。
あのオチはトリアーならやらないだろという期待を見事に裏切ってくれたとんでもないラストだった。
このままジョン・ウォーターズ方向にいってしまうのか!?


番外編

「2001年宇宙の旅」
初めて劇場で観た!感無量!

「リアリティのダンス」
正直記憶に無い!もっかい観ねば!

「LIFE!」(劇場未鑑賞)
劇場で観たかった!デヴィッド・ボウイが流れる瞬間が最高!



来年はもっと映画を観れますように。

2014年12月21日日曜日

「グランド・ブダベスト・ホテル」

苦手なウェス・アンダーソン映画。
日本でいう三谷幸喜な印象があって、有名人ばんばん使ってコメディやるぜ!みたいな。
が、今までで一番楽しめた気がする。
演出をいかに楽しむかがでかそう。

なんか昔の文豪が元ネタ、という話を聞いたけんだけど「パンズ・ラビリンス」同様そこを全く知らなかったので、背景は全くわからなかった。

スキーのシーンがとても印象に残っている。
久々にエドワード・ノートンを見れて安心した。


2014年12月17日水曜日

「メビウス」

ついに見たよメビウス。
キム・ギドクと言えば、中学の時毎月隅から隅まで読んでいた映画雑誌”プレミア”で「悪い男」が盛り上がっていて、いつか観なきゃと思いつつ結局一本も観れずにここまで来てしまっていた監督。
これが初キム・ギドクで良かったのかもしれない。

キャッチコピーは「不思議の国のペニス」!
描写はリアルめなんだけどとても寓話的で、恐らく主人公は父親のペニスなんだと思う。
物語の展開(ペニスの境遇)が、めちゃめちゃ面白く、というかもうこれしか無い!ってくらい完璧だった。
やってることは痛いんだけど、展開が気持ち良すぎてどんどんお父さんのペニスと気持ちが一体化してしまって笑顔になる!
ペニスにも心はあるんだ!自殺もするんだ!

演出は全てにおいて素晴らしかった。
ラース・フォン・トリアーといい、どうしてこんなにも物語を面白く魅せてくれる人は性に取り憑かれているのだろう。
日本でいうと「女囚さそり」シリーズを筆頭とするピンキーバイオレンス的な匂いがむんむんして、そんな映画をリアルタイムで劇場で観れる事に感動した。
夢の撮り方一つみてもキレっキレ。

後で知ったのですが、お母さんと浮気相手は一人二役だったらしい。
浮気相手の偽乳を見て、なんでこの映画に偽乳の女優使うんだとキレそうになったのですが、お母さんもまた偽乳だったのはそういう事だったのか。
二人とも偽乳だった時、この映画の言わんとすることが理解出来た気がしたのだけど幻想に終わってしまった。
もし偽乳に意図があって、この映画のために入れたのであれば、それこそ女優魂だなと。
多分違うんだろうけど。

ラストシーンについては、もっと身震いするような(衝撃的という意味ではない)エンディングを期待していたけど、自分の描く物語のラストと合致してしまって、”不感症フィルム”の目指すべき、そしてその先にあるものを探さなくちゃなあと考えさせられた。
寓話的、というのはこのラストにも深く繋がっている。

表面上は性に取り憑かれた人間の醜いドタバタエログロブラックコメディなんだけど、とても優しく、そして愛を感じられる映画。
今年不動の一位でございます。
もう一回くらい劇場で見たい。


2014年12月15日月曜日

「1900年 第一部」

イタリアの1900年代を描いた、ベルトルッチの大作。

地主と百姓という別々の階級で、同じ日に生まれた少年2人の物語。
相変わらずファシストとか共産主義とかいまいち良くわかっていないのですが、何となくイタリアの歴史が見えてきたのかもしれない。
見えていないのかもしれない。

カエルの冠はちょっと感動した。
針金に適当にぶっ刺して、ピクピク動いてる大量の蛙を誇らし気に頭に乗っける少年。
やろうと思うのが凄い。

ベルトルッチってパゾリーニの助監だったのか。
35歳でこれを撮っちゃうなんてすげーな。

流石ベルトッルチだけあって、ばんばんチンコ出てくる。
あの少年のチンコ大丈夫か!?
必見。


2014年12月14日日曜日

「フル・メタル・ジャケット」

自分はいままでこの映画をとんでもなく勘違いしていたようだ!

前半は狂気を遠巻きからみてコメディに仕立て、後半は狂気の中に入らせてジリジリと戦争の怖さを伝えて行く映画…じゃなかった!
少なくとも今回の鑑賞では。

前半はある程度同じ印象だけど、後半は確実に違う。
ただただアメリカという国家を馬鹿にした、下手したら前半以上にコメディじゃないだろうか。
しかも「博士の異常な愛情」以上に良質の。

後半部、特に戦闘シーンに入るくだりは悪意しか無い展開と演出。

道を間違える

一人特攻

撃たれる

後方、何も確認せず”強大な敵”がいるからと戦車を要求
その間もどこにいるのかわからない敵にただひたすら撃ちまくる。

待ってられるかともう一人特攻

撃たれる

敵が強すぎる!撤退しよう!

見捨てるのか!とまた一人特攻

しゃーなしでみんなで突撃

犯人女一人

殺してヤッホー!ここは地獄だぜ!


こいつら馬鹿なんじゃないかと。
アメリカが端から見れば滑稽に見える訓練で鍛え上げた殺戮マシーンたちは所詮なんの役にも立たず、最新兵器と物量と人海戦略でなんとか形にはなったものの、本当は死にかけた女性兵士一人殺すことで精一杯のただ汚い言葉を垂れ流すだけのおぼっちゃまだった。
そうやって後半部を観ると、彼らの行動の節々に笑いが込み上げてくる。
恐らく監督の「博士の異常な愛情」について言った「本人たちが必死になればなるほど、第三者から観る笑いがある」という言葉の完成系に近いものではないのかと。

それを国家レベルまで押し上げると、強大でバカな国アメリカ(洗脳された役に立たない兵士達)と、貧弱だが知恵をつかう国ベトナム(女性スナイパー)という構図になるんだと。

もちろん登場人物たちは狂っている。
でもそれは戦争のせいではなく、アメリカのせいで狂ってしまった。
つまり、”戦争の狂気”ではなく”アメリカの狂気”の映画だと思った。

これは多分、「プライベート・ライアン」を観た直後というのも大きいと思う。
戦争の悲惨さ、ドラマ性、命の価値…などをテーマにした映画(違う戦争、というのも大きいだろうが)と比べ、「フル・メタル・ジャケット」はもっと風刺的で現代に一石を投じる映画。

前半部ばかりがとりあげられる映画だけど、後半部の話はほとんど聞かない。
みんなどうみているんだろう。

「プライベート・ライアン」

安定の感動。
このカメラマン凄すぎる。

中盤でトム・ハンクスが「ここの基地潰してから行くよ」って言う所は毎回腹立つ。
いやおまえが任務の邪魔になる事するな言うてたやん。
挙げ句の果てに、「戦争を終わらす事が任務だ」っておい。
話破綻しとるがな。
御陰で味方死んじゃうし。

でも最後はぐっと来ちゃうのが悔しい!ビクンビクン!

2014年12月13日土曜日

「霧の中の風景」

今年は「エレニの帰郷」がとても印象に残る年だったので、年の総括もあり鑑賞。
大学の時に一度だけ観たけど、恥ずかしながら巨大な手はこの映画だったのかと鑑賞中にびっくりした。
因にあのシーンは逆再生なことはないよね。
水の滴りが目視できなかった。

雪のシーンは本当にすばらしい。
タルコフスキーといい、雪を格好よく決めてこその映画監督だな。

これを観ると「トウキョウソナタ」の会社員が歩いて行くシーンはやっぱりアンゲロプロスへのオマージュだと思う。

2014年12月1日月曜日

「インターステラー」

劇場:ピカデリー新宿

ノーランの新作!

第一の惑星に行くくらいまでは最高に面白かった。
「2001年〜」みたいなワープホール通って、くそでかい波が来て、二時間くらいで帰ってきたら24年経ってました!残念!みたいな展開は最高だった。
ただ、マットデイモン出てきたくらいから、どんどんチープなドラマが始まって萎えてしまった。
この映画にあんな下らん裏切りとかいるかと。
しかも、あんだけいろいろとサイエンスフィクションしてたのに、最後の惑星に行くときに「もうこの際相対性理論は置いとこう!」って!おい!ノーラン!やる気あんのか!

一つぐっときたのが、マシュー・マコノヒーの
「昔の人は空を見上げて憧れていたが、今は砂だらけの地上しか見てない」みたいな言葉。
これたぶん「時計仕掛けのオレンジ」の「2001年〜」をセルフパロディした台詞、
「みんな空ばかり見上げて、地上のことには目もくれない」のオマージュだと思う。

「インセプション」みたいな新作を期待する!

追記:
ホドロフスキー尊師の言っていた、集合体としての人間、という概念がよくわかるシーンがあった。
言わば、Aプランと、Bプランのうち、Bはそっちなんだなと。
個人ではなく、人間という生命体を繋いで行くこと。
あれか、人類補完計画か。
違うか。